先輩の彼女にしてもらいました
私はまだアキちゃん達に何か不満を言いたそうにしている彼の手をひいて、もと来た道を歩き出す。

「蒼井、もしまだお前の気がすまないんなら今すぐ俺がアキと吉木をぶん殴ってきてやってもいいんだぜ」

時田くんの目は真剣だった。とてもその愛らしく少年っぽい顔立ちからは想像もできないくらいに彼の内面は男らしいことを私は知っていた。

だからこの場から彼を連れて早く立ち去ろうと思った。

「すずな、まってよ」

「すずなっち、ごめんね、私達」

ヒナちゃんとココロちゃんの泣きそうな声にも振り返ってはあげられなかった。

アキちゃんには言いたいことは全部言えたような気がしていたから、後悔はなかった。

ただ、この世の中には、どんなに言葉を尽くしても分かり合えない人もいるんだから仕方がないんだって自分に言い聞かせていた。

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