先輩の彼女にしてもらいました
「俺、蒼井が好きなわけじゃないよ、だから変な気をつかうなよ」

精一杯、強がっているような時田くんの横顔が、悲しかった。

「俺は友達でいられたら、それでいい」

「時田くん」

ああ、多分、私は時田くんがとても好き。

だから、私のためにこんな寂しい顔をさせたくないよ。

でもそれは、時田くんが大切な友達だから。

私にとっての特別な人は、あの人しかいない。そんなことはわかってる。

だけど、この時、時田くんの気持ちに寄り添ってもいいと思った。

彼をこのまま傷つけるよりもずっとマシだと思ったから。

だから、泣いている彼を少しでも慰めてあげたかった。

「いつも、ありがとう、時田くん、私、一杯感謝してるよ」

「蒼井」

彼が、腕を伸ばしてきたけれど私は逃げようとは思わなかった。
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