先輩の彼女にしてもらいました



体育館の横に建てられている体育倉庫は窓も小さく冷房もない。

この時期は、蒸し暑くて10分以上はとてもいられたものではない。

扉が半分開いていたが、一応ノックしてみた。

「蒼井さん、いる?」

中から、ハイって言う小さな声がした。

案の定、中は蒸し風呂状態だ。

「蒼井さん、どこ?」

倉庫の中に彼女の姿をすぐに見つけられなかった。

「せんぱーい、ここです」

奥の方から、弱々しい彼女の声がしたので、そちらに目を向けた。

彼女は、3メートル以上もある脚立に座りながら、備品整理をしていた。

目が合うと、俺は少し笑顔をつくった。彼女は、びっくりしたような顔をする。

ここ最近の俺は、彼女にこんな風に笑いかけてさえあげられなかった。

< 406 / 450 >

この作品をシェア

pagetop