先輩の彼女にしてもらいました
自分のことしか考えられなくて、彼女の気持ちをないがしろにしていたんだ。

このままで、いいわけ無い。彼女ときちんと話さないといけない。

「蒼井さん、ここ暑いだろ、大丈夫?」

「は、はい、それより」

俺は、脚立を手で押さえながら、彼女を見上げた。

なんだか彼女が、震えているように見えた。

まるで、高いところに上がって、降りられなくなった子猫みたいだ。

「もしかして、高いところが苦手?」

「は、はい、平気だと思っていたんですけど、いざ上がってみたら怖くなってしまって。さっき揺れてますます怖くなって」

「降りられる?」

泣きそうになっている彼女は、首を横に振る。

「今そっちにいくから」

「あ、ダメです、先輩、危ないですから」

脚立に足をかけようとすると、ぐらついているのがわかった。

この脚立は重心が安定していないのかもしれない。

ゆっくりと慎重に上がっていくと、脚立が揺れるたびに彼女は小さく悲鳴をあげていた。
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