先輩の彼女にしてもらいました
「寂しかった、です、先輩」

目を閉じて、俺の手をギュッと強く掴む彼女は、もうフラフラだった。

「ごめん、ごめんな、蒼井さん」

ここ最近、俺のせいでずっと彼女に不安な思いをさせて苦しめていたのだろうか。

俺は自分のことで、いっぱいいっぱいで、彼女を思いやってあげられなかった。

そんな余裕すらなかった、だけどそんなのはいいわけだ。

「降りよう、蒼井さん、しっかりして、もし動けそうなら動いて」

「ううん、もういい、先輩とここにいる」

俺の肩にしなだれかかる彼女の体を抱き抱えるようにして、ゆっくりと脚立を降りようとした。

「わかった、蒼井さんは何もしなくていいから、俺にしがみついていて、絶対、離すなよ」

「うん、うん」

彼女は嬉しそうに笑って俺にギュッとしがみつく。
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