先輩の彼女にしてもらいました
「つばさ先輩、元気だよ、あの人昨日ここでも夜ランニングして、ファンの女の子に追いかけられてさー、大変だったんだ」

「え、そうなの?つばさ先輩大丈夫かな、ケガとかしてない?お腹壊してない?あと、それと」

先輩の近況を聞いて急に心配になる。昨日の電話で、彼はそんなことは何も言わなかったのに。

「おいおい、おまえ、相変わらずつばさ先輩ばっかだよなー。たまには友達の俺の心配もしてよ」

「あ、そっか、時田くんも応援頑張ってね」

「うん、蒼井。あのさ、俺、来年こそはレギュラーになって」

「あ、うん」

沙織ちゃんが、顔の前で手でバツを作っている。電話を切れと言ってるみたいだ。

「あ、ごめん、時田くん、切るね」

「おーい、蒼井、最後まで言わせろよ、あ、うわっ、ちょっと」

時田くんの焦ったような声がしたかと思うと、電話のむこうでガサガサと騒がしい音がする。
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