先輩の彼女にしてもらいました
それにしても、試合前だっていうのになんて緊張感がないんだろうか。

「蒼井さん、蒼井さーん」

先輩の大声が、スマホから聞こえた。

「蒼井さん、愛してるよっ、サイン送るからテレビ見てて。

あと、時田からの電話は着信拒否して、じゃあねっ」

言いたいことだけ言って、先輩はスマホを切ってしまった。

あ、愛してる、だなんて、あんなにサラッと言っちゃって。先輩ったら。だけど嬉しすぎて、顔がフニャフニャに緩んでいく。

放送では、インタビュー中の大谷キャプテンが後ろを振り向き、凄い剣幕で怒鳴りだす。

「お前らうっせーぞ、静かにしてろ、つばさ、集中しろっ」

グダグダになった、放送部の映像はそこで終わってしまった。

「私もあいしてるーって言わないと。すずなちゃんっ」

沙織ちゃんにあれからずっと冷やかされた。

だって、つばさ先輩の声が大きすぎて放送からも、声が漏れちゃっていたらしいから。

うー、恥ずかしいよぉ。つばさ先輩ったら。

顔の火照りはいつまでも冷めなかった。

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