先輩の彼女にしてもらいました
実況のアナウンサーも、つばさ先輩の活躍をたたえている。

カメラが、再び、シュートを打つ彼を追いかけて、ネットにボールが入ると、再び彼をアップにする。

さすがに、テレビ越しには彼の背中の翼は、見えなかった。

先輩は、カメラに気づいているかのように目線を向けて、ニッコリと綺麗に笑う。

その笑顔のあまりの美しさに学校の特設応援会場からは、一斉にため息が漏れる。

もう、これだから。

私も自然と口元が緩んでしまう。

ああ、彼の女性ファンが、今また確実に増えたような気がする。

まだアップに写しだされる先輩は今度は、いたずらっ子のような表情で、親指で背中を指差してみせる。

背中を確かに指差してもう一度笑って、

そして何かを言っているみたいに見えた。

口元を読むとおそらくは、

(す ず な)

て言っているように見える。

「あーっ」

私は素っ頓狂な声を上げて、立ち上がる。

「どうしたの、すずなちゃん?」

隣に座っている沙織ちゃんはびっくりしている。

おそらくは、私と先輩にしかわからないであろう、背中の翼を指差すサイン。

それに、私の名前を呼んでくれた先輩。

いつもは、照れてあまりまだ呼んでもらってなかったんだ。だから、嬉しくて嬉しくてそれだけで胸が熱くなる。

つばさ先輩、

どんなに、遠くに離れていてもあなたの心の中には、私がいつもいますように。


できることならば、私があなたの背中の翼になって、空高く飛ばせてあげたい。


そう、これからも、ずっと一緒にあなたと高く飛びたいです、つばさ先輩。


「つばさ先輩、ファイトーっ」

大声で声援を送ると、沙織ちゃんも一緒に立ち上がり応援してくれた。

そして、
周りの生徒達も立ち上がり腕を高く上げて歓声をあげる。

その瞬間、私達は一丸となってT高の勝利を信じる。
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