はつ恋の君をさがしてる
偶然と必然
私はずっと何年も大切なはつ恋の君をさがしてる。
小さい時にほんの数回だけ祖母の家の近くの神社で遊んだ年上の男の子。
名前も知らない。
だけど彼は私にとっては王子さまだから
もう一度だけでいい
もう一度会いたい。
「鈴加さん?ちょっと!なにぼさーっと呆けてるの?」
「え?あ…すっ、すいません」
仕事中につい考えこんでしまって、今日もまた先輩に叱られてしまった。
「まったく何してるの?ちゃんと時間までに頼んだ書類の入力は済ませてちょうだいね!
」
「はい。すみません、すぐに。」
私はあわてて先輩の須藤さんに頭を下げてからパソコンに向き直った。
須藤さんはそんな私をしばらく確認するかのように背後に立っていたが、しばらくすると自席に戻っていったので、私はそっと息を吐いた。
「あ~らら。すずったらまたやらかしたの?」
私と須藤さんのやり取りをすぐ横で聞いていた同期の石田芽衣子が呆れたように声をかけてきた。
「うん。またやっちゃったよ。ははは。」
私は苦笑を織り混ぜながら小声で返事を返して仕事に戻る。
芽衣子もすぐに仕事に集中し始めたので、その後は終業時間までとにかく頼まれた入力に没頭した。
そしてなんとか終業時間の3分前に終了させることができてホッと息をつく。
私の名前は澤田鈴加。
高校卒業と同時に保険会社に事務職で就職し、すでに6年目の23才。
配属されたのは主に保険金支払いの為の審査をする部署だが、高卒の私には責任の重い審査業務は回ってこなくて、コピーや簡単な書類の入力業務などのサポート的な雑用ばかり。
それでも毎日仕事があるだけで幸せだ。
両親も祖父母も家族と呼べる人が誰一人居ない私には、お金がいただけるこの仕事がなくなったら生きてはいけないのだから。
両親は私が小学3年生の夏休みに仲良く交通事故で亡くなった。
その日祖父母の家に一人で泊まりに来ていた私は、そのまま祖父母と暮らすことになった。
けれど、高齢だった祖父母も私が中学を卒業する頃に立て続けに亡くなり。
身寄りがなくなった私は児童養護施設で暮らしながら高校を卒業したのだ。
学費は両親と祖父母が遺してくれたお金を遣り繰りしてなんとか卒業した。
保護者が居ない私には児童養護施設の施設長さんが頼んでくれた弁護士さんが後見人になってくれていて、成人するまでのお金の管理をお任せしていたのだ。
すでに成人してからは、いくらか残っていたお金を通帳で渡されたが、弁護士さんは今でもよき相談相手として私を気遣ってくれている。
金曜日の今夜は久しぶりにその弁護士さんと夕食を一緒に食べる約束の日だ。
私は終業のベルがなり終わったのと同時に引き出しからバックを引っ張り出してこっそりと席を離れた。
めざとく見つけた芽衣子が制止する声を聞き流して、お疲れさまです!と声をかけてから事務室を飛び出した。
小さい時にほんの数回だけ祖母の家の近くの神社で遊んだ年上の男の子。
名前も知らない。
だけど彼は私にとっては王子さまだから
もう一度だけでいい
もう一度会いたい。
「鈴加さん?ちょっと!なにぼさーっと呆けてるの?」
「え?あ…すっ、すいません」
仕事中につい考えこんでしまって、今日もまた先輩に叱られてしまった。
「まったく何してるの?ちゃんと時間までに頼んだ書類の入力は済ませてちょうだいね!
」
「はい。すみません、すぐに。」
私はあわてて先輩の須藤さんに頭を下げてからパソコンに向き直った。
須藤さんはそんな私をしばらく確認するかのように背後に立っていたが、しばらくすると自席に戻っていったので、私はそっと息を吐いた。
「あ~らら。すずったらまたやらかしたの?」
私と須藤さんのやり取りをすぐ横で聞いていた同期の石田芽衣子が呆れたように声をかけてきた。
「うん。またやっちゃったよ。ははは。」
私は苦笑を織り混ぜながら小声で返事を返して仕事に戻る。
芽衣子もすぐに仕事に集中し始めたので、その後は終業時間までとにかく頼まれた入力に没頭した。
そしてなんとか終業時間の3分前に終了させることができてホッと息をつく。
私の名前は澤田鈴加。
高校卒業と同時に保険会社に事務職で就職し、すでに6年目の23才。
配属されたのは主に保険金支払いの為の審査をする部署だが、高卒の私には責任の重い審査業務は回ってこなくて、コピーや簡単な書類の入力業務などのサポート的な雑用ばかり。
それでも毎日仕事があるだけで幸せだ。
両親も祖父母も家族と呼べる人が誰一人居ない私には、お金がいただけるこの仕事がなくなったら生きてはいけないのだから。
両親は私が小学3年生の夏休みに仲良く交通事故で亡くなった。
その日祖父母の家に一人で泊まりに来ていた私は、そのまま祖父母と暮らすことになった。
けれど、高齢だった祖父母も私が中学を卒業する頃に立て続けに亡くなり。
身寄りがなくなった私は児童養護施設で暮らしながら高校を卒業したのだ。
学費は両親と祖父母が遺してくれたお金を遣り繰りしてなんとか卒業した。
保護者が居ない私には児童養護施設の施設長さんが頼んでくれた弁護士さんが後見人になってくれていて、成人するまでのお金の管理をお任せしていたのだ。
すでに成人してからは、いくらか残っていたお金を通帳で渡されたが、弁護士さんは今でもよき相談相手として私を気遣ってくれている。
金曜日の今夜は久しぶりにその弁護士さんと夕食を一緒に食べる約束の日だ。
私は終業のベルがなり終わったのと同時に引き出しからバックを引っ張り出してこっそりと席を離れた。
めざとく見つけた芽衣子が制止する声を聞き流して、お疲れさまです!と声をかけてから事務室を飛び出した。
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