はつ恋の君をさがしてる
あっという間に散っていった3人の後ろ姿にほっとしながら須藤さんに頭を下げる。
「おはようございます。ありがとうございました。」
「おはよう。私は別になにもしてないわよ?それより大丈夫?」
「はい。思っていたほどのダメージは無かったです。」
そう正直に答えた私に須藤さんはふっと笑って、澤田さんはやっぱり強いわねと言って席に戻っていった。
私はその背中にもう一度頭を下げて給湯室にいつもの雑用を片付けに行った。
本来なら新人の仕事だが私がやるようになってからは誰もやらない水やりや雑巾がけの始業前の雑用を私は苦に思ったことはない。
さすがに毎日はできないので2日おきで負担にならないようにしているし、たまに早く来た芽衣子が手伝ってくれることもあるからわりと気楽にやっているのだが、芽衣子に言わせればおかしなことらしい……
でもまぁ好きでしてるんだか良いよね?

そして今朝も事務室内の観葉植物たちに心の中であいさつしながら水やりをする。
観葉植物はすべてレンタルで月に一度業者が様子を見に来る。
その時に枯れていたりしたら申し訳なくて、それにいつも仕事に煮詰まったときには和ませてくれるから、これは感謝からくる行為であって義務でも偽善でもない。
私はそう思っていたのだが……。
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