はつ恋の君をさがしてる
「なぁ鈴加?会社は忙しいのか?」

朝食を食べている最中に高嶺さんが私の顔色を伺うように尋ねてきた。
どう答えようか?と一瞬躊躇する。

「別にいつも通り変わりありませんよ?私の仕事は雑用みたいなものですし。」
「そうか、そのわりに最近ちょっと疲れた顔してる気がするが?それに、俺は普通の会社で働いた経験ないから、偉そうな事は言えんが雑用だって大事な仕事だろ?病院でも色んな人がそれぞれの仕事をしてくれてるから自分の仕事がちゃんとできる。鈴加の仕事だって鈴加がしなかったら困る人間はいるだろう?俺はそう思うけど?」

どうしたんだろう?
なんか突然高嶺さんに励まされてる気がする……。

「ありがとうございます……」
なんだか泣きそうで、それ以上は何も言えなかった。
高嶺さんもそれ以上は追及してこなかったので、お互い黙ったままで朝食を食べた。

朝食を終えて片付けようと立ち上がると、高嶺さんが片付けならやるから支度しろ!と言ってくれたので、驚きつつも出勤の準備に部屋へ戻った。

すでに着替えは済ませていたので、軽く化粧をする。
高嶺さんの前ではすでにすっぴんでいることが平気になっている。
もともと化粧はあまり好きじゃない。
本来なら母かもしくは祖母がやり方を教えてくれたのだろうが、私が化粧をする必要に迫られた時にはすでに二人とも居なかった。
困り果てた私に化粧を教えてくれたのは施設の職員だったおばさん達だ。
流行りの新しい化粧品はわからないからと普段の肌のお手入れや簡単なメークの手順を教えてもらって、その後入社してから芽衣子にも色々習った。
それでも苦手意識があるのでなかなか上達しないのだが、社会人としての最低限なマナーだからと頑張ってはいるのだ……
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