はつ恋の君をさがしてる
「澤田鈴加さんで間違いはありませんか?」
「はい。澤田です。」
緊張して声がかすれる。
「献血用の採血する前にちょっと検査しますね」
そう言われて右腕をとられる。
小さな細い注射器で採血されるようだ……

見ちゃダメ!見たら間違いなくまた大失態をしでかす!

私はさりげなく横を向いて俯いた。
それはあっと言う間だった、チクッと感じたと思う間もなく終わりましたよと声がした。
看護師さんは見ていてくださいね~と注射器から容器に入った液体に私の血液を垂らす。
するとそれはゆっくりと沈んでいった。

「はい、問題ありませんね。では献血お願いします。」
そう言われて車の奥の寝台に案内される。
言われるままに横になると、今度は若い男性の看護師さんが横に立つ。

「採血を担当する浅田です。昼食はきちんと食べられましたか?」
「はい。食べました。」
「それなら良かった。では始めますね。」

浅田さんはそう言うと今度は左腕に触れる。

いよいよだ……頑張れ!大丈夫!これは仕事!
何度も自分に言い聞かせる。
緊張が伝わったのか?浅田さんが針を持ったままで心配そうに見つめてくる。
よせばいいのについ針を見てしまった……
なんか太い……うぅぅ……ダメかも。

「あの?大丈夫ですか?もしかして注射苦手な人?」

そう聞かれて、思わず小さくうなずいてしまった。

「でも、大丈夫です。我慢できます……たぶん?」

ぷっ。くっははは!

浅田さんは私の言葉がよほどツボにはまったらしくしばらく笑っていた。


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