はつ恋の君をさがしてる
動きだす時間
久しぶりに訪れた神社は昔とまったく変わっていなかった。

正直に言うと、私はあの事故以来この神社には一人ではあまり近寄らないようにしていた。
お正月の初詣や夏祭りの時には必ず祖父母が一緒に来てくれていた。

それでもあの石灯籠の側には絶対に行かなかったけれど……。

「この公園……こんなに小さかったかなぁ?昔はひとりで遊んでたんだよね~」

近所に同じくらいの年齢の子供がいなかったし、神社に行くには必ず祖父母の家の前を通らなければならなかったこともあり不審者が出たことのない田舎では、子供がひとりで遊ぶくらいのことを気にする人はいなかった。
だからあの日も……私はひとりで神社に遊びに行ったのだ。

小さくなったブランコに腰掛けて思い出してみる。
いや、小さくなった訳ではなくて私が大きくなったんだった……。

神社の小さな公園は私だけのひみつ基地みたいで大好きだった。
だけどあの日はひとりではなかった……

確か最初はあの兄弟の方から声をかけてきたんだよね?

『いっしょにあそぼうよ!』
『うん!いいよ!』

私より年上であの時で小学生くらいだったと思う。
お兄さんの方はもっと大きかったかも?
私は小さかったからあの兄弟の年齢すら分からないけれど……
でも二人とも一緒に遊んでくれたんだよなぁ~楽しかったなぁ。

一緒にブランコに乗ったり、追いかけっこもしたような?
それから……そうだ!かくれんぼをしたんだ!
どうして忘れていたんだろう?
かくれんぼがしたいってそう言ったのは私だ……

かくれんぼなら小さな公園よりは神社が良い!
そう言ったのは弟さんの方で、お兄さんの方には危ない所には行かないように!と言われたんだった……

「そうか……それで神社の方に居たんだ。」

「何がそうか!なんだ?」

「え?」

不意に後方から声をかけられてびっくりして振り向くと、そこには高嶺さんが立っていた。

「なかなか帰ってこないから、俺も散歩してたんだ。ここで会えて良かったよ迷子になるとこだった……」

そう言いながら窮屈そうに隣のブランコに無理やり座る高嶺さんについ笑ってしまう。
「大丈夫ですよ!迷子になるほど広くないですから!」

そう言った私に苦笑いで頭をくしゃっとかきあげた高嶺さんだったが、急に立ち上がると真っ直ぐに神社の方に歩いていく。
その後を私もあわてて追いかけた。
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