はつ恋の君をさがしてる
「なんだろう?なんかココ見覚えあるなぁ?」

高嶺さんがぼそぼそと呟くがよく聞き取れない。

ふらふらと辺りをさ迷うみたいに歩き回る高嶺さんに私は困惑していた。
しばらくそうした後で立ち止まったのは、あの石灯籠の近くで……
私は近寄れなかった。

◇◇◇◇

1時間半くらいは暖かい縁側で昼寝をした俺は、起き上がって見回しても鈴加がいないので急にさみしくなって簡単に戸締まりをしただけで鈴加を探しに出た。

車で通った道とは反対側に歩いていったのは単なる思いつきだった。

すぐに鳥居が目に入る。
もしかしたら?あれが鈴加が腕をケガした神社か?
つい最近聞いたばかりの鈴加のトラウマ話を思い出して自然と足が早まる。

すると、鳥居にたどり着く手前で鈴加を見つける。
ひとりで小さなブランコに座って物思いにふけっている様子だ。
俺はイタズラ心からそっとブランコの後ろから近づいた。
鈴加は俺には全く気が付いていないようで、ぶつぶつ独り言を言い出した。
驚かすつもりで近づいたが、全く気付かれないのも癪に触る……。

だから思いきって声をかけてみた。
すぐに面白いほど驚いて振り返った鈴加に
内心でしてやったり!と歓喜する。
それでもポーカーフェイスで鈴加の隣のブランコに座ってみせた。
さすがに窮屈でしまったと後悔したが、鈴加かおかしそうに笑うからまぁいいかと思う。

ブランコに座って眺めた景色に不意に違和感を感じた。
なんだか知っている気がして、それを確かめようと立ち上がる。
目の前は神社の境内だった。

どこにでもありそうな小さな神社
なのに……妙に気になった。

後ろから鈴加が距離をおいて付いてきていることには気がついていたが、俺はそれに構わずうろうろと歩き回った。
何か……何か大切なことを忘れている気がした。
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