はつ恋の君をさがしてる
それを確認すると高嶺さんは私から離れて後ろに向き直る。
私からは高嶺さんの背中しか見えない。

「で?お話とは?」
高嶺さんの問いかけに最初に口を開いたのは高成さんだった。
「高嶺!さっきも説明したが鈴加さんに危害を与えるつもりはなかったんだ。結果的にはこんな事になってしまって本当に申し訳ない。」

「まったく、まさか兄貴まで馬鹿げた芝居に加担するとは思わなかった。こんな芝居をする上司がいる会社で大切な鈴加が働いてるかと思うと不安でしょうがない!」

吐き捨てるようにそう言う高嶺さんがどんな顔をしているのか気になったが、私はおとなしく見守るしかできない。

「おっしゃる通りです。今回のことは澤田さんにもあなたにも謝罪します。反省を促す為とは言え手段を間違えました。体調が万全でない澤田さんを巻き込んでこんな結果になってしまって、本当にすみません。」

深々と頭を下げる副社長と秘書、そして高成さん。

それを高嶺さんの背中越しに複雑な思いで見つめる。

「謝罪は受け入れます。それで?ここまでしてその後はどうなったんです?鈴加もそれを一番気にしていると思うんですが?」

確かにそうだ!
あの3人組はどうしたんだろう?
気になってついつい身を乗り出してしまう。
それが背中を向けていても分かるらしい高嶺さんが、僅かに肩を震わせて笑いを堪えている。
そんな高嶺さんの背中を拳で軽く叩いて不満を表してみた。
高嶺さんは後ろ手に私のてをつかむと宥める様に握り締めた。
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