はつ恋の君をさがしてる
「実行犯の桃井、白崎、廣田の3人には2週間の自宅謹慎と復帰後には別々に部署異動させる、自宅に引き込もって指示を出していた主犯の渡部には地方に転勤する辞令を出した。」
副社長の言葉に私は思わず声を上げていた。
「副社長!いくらなんでもそこまではやり過ぎです!私はそんな事望んでません!」
高嶺さんが抑えてなかったら副社長に詰め寄る勢いだった。
「いや、それくらいは当然だろ?と言うか、俺としては鈴加を辞めさせて家に閉じ込めときたいくらいだ。鈴加の待遇は?こんな騒動があったのに今まで通りはまずいんじゃ?」
高嶺さんが妙に冷静で私だけが興奮していることに恥ずかしくなるが、辞めさせて云々のくだりに引っ掛かりを感じた。

「それについても考えてある。逢坂!」
副社長はそう言うと背後に控えていた秘書を振りかえる。
「はい。澤田さんには明日から総務課に異動していただく予定です。」
「総務課?私が?」
「総務課の人材育成担当に勤める私の妻が来月中旬から産休に入るので、後任を探していまして……以前から澤田さんが欲しいと聞かされていたので副社長にお願いいたしました。」
逢坂と呼ばれた秘書さんはにこやかにそう答える。
「人材育成って私にそんなこと……」
自信がなくて絶句してしまう。
「鈴加?大丈夫か?」
高嶺さんの声に顔をあげる。
いつの間にか高嶺さんの背中の壁は私の前から移動していて、副社長たちが私を心配そうに見つめていた。
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