はつ恋の君をさがしてる
そして翌朝。
出社を渋る高嶺さんをなんとか説得して出勤の支度を済ませた。
二人で朝食を食べると高嶺さんの気が変わらないうちにと玄関に急ぐ。

「こらまて!会社まで車で送るから慌てるな!」
高嶺さんに腕を捕まれて敢えなく玄関まであと数歩の廊下で止められた。
「え?高嶺さんも仕事でしょう?私なら大丈夫ですよ?」
「ダメだ!俺が心配で大丈夫じゃない!電車で倒れたらどうするんだ?」
「そんな……心配し過ぎですよ!」

最近過保護すぎな高嶺さんに苦笑いしながら捕まれている腕を何気なく外そうとしてみたが、がっしり捕まれていてダメだった……

「今日の勤務は午後からだから、朝だけでも送らせろ!」
しつこい高嶺さんに辟易しながらも承諾する。
でないと遅刻しそうだし、いつまでも離してもらえないのも困る。

結局高嶺さんの車で会社の前まで送迎されてしまった……
おまけにわざわざ運転席から降りてきてお見送りされてしまう。
「ちょっと!高嶺さん!みんなに見られちゃいます!」
まだ早い時間とは言え、同じように出勤してくる社員たちもいるので視線を感じて恥ずかしくなる。
「良いだろ?ちょっとした虫除けだ」
そう言ってニヤリと笑った高嶺さんは私の頬に触れるだけのキスを落とすと車に乗り込んで静かに離れていった。
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