はつ恋の君をさがしてる
「とりあえず12階押してくれよ。」

俺はぼそっと答える。

相良は俺に疑いの視線を向けた後でゆっくりと階数ボタンを押す。

エレベーターはやっと動き出した。

ボタンは俺の部屋がある12階しか押されていない。
相良が住むのは俺の2つ上の14階だ。

どうやら部屋までついてくるつもりのようだ。

まぁ仕方ないか。

どう見ても未成年にしか見えないずぶ濡れな鈴加を無言で抱えてる俺

知らない奴が目撃したら不審者だろうなぁ

しかし、どう説明したら良いんだ?

あぁ面倒なことになったな……

無情にも優秀な高速エレベーターは素晴らしい速度で俺たちを12階まで運ぶと静かに止まった。

相良がドアを片手で押さえて先に降ろしてくれる。

俺は後ろから当然のようについてくる相良を従えて自分の部屋に向かう。

ドアの前で念のために振り返ると、相良がジト目で睨んでいる。

俺は渋々片手で鈴加を抱え直してポケットからカードキーを取り出して部屋を開けた。

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