はつ恋の君をさがしてる
退院して帰宅して…衝撃的な話を聞かされて…
一晩中考えた。

翌日は仕事。

私は早朝から活動しだす大家さんと話がしたくて早起きして、アパートの隣に住む大家さんの自宅を訪ねた。

大家さんは私が来るのがわかっていたみたいで、朝食に誘ってくれた。

私はこれが最後かもって思ったから、素直にお邪魔してごちそうになることにした。

大家さんは70代ながらとてもお元気で活動的な人。
時々夕食に誘ってくれたりもしたので、私にはもう一人のおばあちゃんのような存在だったりする。
まぁ私がそう思っているだけだろうけど……

「ごめんね。私がちゃんと話せば良かったんだけど……平原さんから聞いたのよね?」

大家さんは私の前にお茶碗や箸を並べながらぽつぽつと言いにくそうに話す。

「もっと早くに話すつもりだったのよ。でも鈴加さんにはどうしても言えなくて…本当にごめんなさいね。」

そう言って頭を下げられてどうしたらいいか判らなくなった私の方がうろたえる。

「あの…大丈夫です。ずっと住めるとは思ってなかったし、それより来月から解体工事が始まるって聞きましたが、私はいつまでにアパート出れば良いんですか?それが聞きたくて。」

私は勧められた朝食を食べながらも大家さんにきちんと聞くべき事を聞かなくては!と前を向く。

大家さんは申し訳なさそうに目を伏せたあとに質問に答えてくれた。

アパートの工事はあと5日したら始まる
私はそれまでには出ていかなくてはいけない。
不要な荷物はそのまま置いていけば処分してくれる。
どうしても次が見つからなかったら1ヶ月ほどなら大家さんの自宅に住んでも良いとまで言われたが、大家さんの自宅も1ヶ月後には解体されてアパートの跡地と自宅の敷地に大きなマンションを建てる計画だそうだ。

私は話を聞き終えると、とにかくどうするか考えますと答えて出勤した。
大家さんはそんな私をいつも通り見送ってくれた。

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