はつ恋の君をさがしてる
「なんてこと言うんですか?私たちまだそういう関係じゃないですよ!」
真っ赤なままで抗議したけど高嶺さんは知らん顔。

「今日からは男女が同じ部屋で一緒に暮らすんだ、曖昧な関係じゃお互い周りに誤解を招く!親父には婚約者のつもりで対応しろと言われてるからな。鈴加もそのつもりでいろよ?」

ウソ……単なるお試し同居のはずでしょう?
平原さんには何も言われてないのに……。

その後は頭の中がフィアンセだの婚約者だのでいっぱいになってしまって、大好きな唐揚げも味がわからなかった……。

「おい?大丈夫か?」

え?

気が付くとすでにマンションの目の前だった……。

「なんかずっとぼーっとしてたけど?どっか具合でも悪いのか?」

心配そうに眉を寄せて私を屈んで覗きこんでくる高嶺さんにびっくりしておもわず後ずさりしたら、履いていたヒールのかかとが段差に引っ掛かり後ろに転んでしまう。

「うわぁ!何やってんだ?悪い、突然で助けるヒマがなかったわ!大丈夫かぁ?」

高嶺さんはそのまま座り込んでしまった私に呆れていたようだった。
かなり恥ずかしい……。

本当に何やってるんだろう。
同居しようと提案したのは私だ。
一緒に暮らすんだから、それなりの覚悟をするべきだったのに……
私はただ住む場所を確保したくらいの気持ちしか無かったかもしれない。

現実を知ったら急に怖くなった。
立ち上がれない……。
マンションに入れない。
< 76 / 195 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop