眩しさの中、最初で最後の恋をした。
「放課後の歌姫?」
私の疑問に、彼は笑いながら言った。
「ごく稀に、放課後の音楽室でピアノに合わせて歌ってる人の歌声を、近い視聴覚室で活動してる僕らは聴いてたんですよ」
その言葉に驚いた。
私は彼の顔をマジマジと見返す。
「ある日、どうしても気になって音楽室を覗いたらピアノを弾いてるのは保健室の田中先生で、歌ってるのは先輩でした」
そう、私のたまのストレス発散。
実は中学までは合唱部だった私は歌うことが好きだった。
しかし、入学した高校には合唱部が無かった。
なので、ピアノが弾ける叔母が空いている時にたまに弾いてもらい思いっきりのびのびと歌うのが私のストレス発散だった。
まさか、聞かれているとは知らなかったので驚いたのだ。
それを近くで聞いてた三人は、驚いた顔をしてこちらを見る。
「あの、時々聞こえる放課後の歌姫って有紗だったの!」
その日菜子の声に私もびっくりする。
「え?なに?日菜子も知ってるの?」
すると、興奮した日菜子がまくして立てるように答える。
「私らが入学した年からたまに部活中に聞こえてくる歌声が、それはそれは綺麗でいつからか不定期に聞こえてくる歌声に放課後の歌姫って名前が付けられたの!」
私の肩を掴んで、前後に振りつつ日菜子はさらに続ける。
「その、正体はなかなか知られないし。歌うのも一~二曲だから誰もわからなくて。しかも不定期!まさか有紗だったとは!」