眩しさの中、最初で最後の恋をした。

「外で活動してる運動部の人間はみんな聞いたことがあるよ!有紗ちゃんだったんだね!」

蒼くんの言葉に要くんもうなずく。

まさか、校庭まで聞こえてるとは思わなかった。
そこに校内巡回中らしい、叔母が顔を出す。

「あらあら、とうとうバレちゃったのね。まぁ、有紗の声量はオペラ歌手並みだもの。届くわよ」

どうやら事の次第を聞いていたらしい叔母は、クスクス笑いながら言う。

「田中先生!あれ?いつもは汐月さんって言ってなかった?」

叔母の声掛けに不思議そうに聞いたのは蒼くん。
よく知ってるなとちょっとその場は口をつぐんでいると、叔母が答えた。

「ふふ。身内贔屓とかにはならないだろうとは思うけど一応養護教諭だからね。先生達以外には黙ってたんだけど、私はこの子の叔母なのよ。この子のお母さんが私の姉」

その言葉にへぇーって周りは関心の声。

「ま、これは逃げられないから歌ってらっしゃいな」

そんな叔母に私は言った。

「ピアノ伴奏で歌う曲とバンドじゃ全然違うじゃない」

ため息混じりに呟けば、叔母は背中をポンポンと叩くと言った。

「カラオケも大好きなんだから大丈夫でしょ!いい思い出になるわよ、行ってらっしゃい」

そうして身内にまで行けと言われて逃げられる訳もなく、私は軽音楽部のバンドに飛び入り参加する事になった。

あぁ、目立ちたくないのに。
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