眩しさの中、最初で最後の恋をした。
「はい、いらっしゃい!名前をどうぞ」
ボーカルのハルトくんがマイクをむけるので、しぶしぶ答える。
「三年二組、汐月有紗です」
「彼女がみんなも一度は聞いたことのある放課後の歌姫だよ!彼女とコラボするのは、この曲」
そうして、鳴り出したのは今年ヒットしているJPOP。
しかも、女性ボーカルの曲。
たしかにこれなら歌える。
遠慮しなくていいわよね?無理やり上げられたんだし。
開き直った私は演奏に合わせて歌い出す。
ハルトくんが、上手く音を合わせてきて綺麗に重なる。
会場のテンションもサビに来る頃には高くなり、跳ねたり飛んだりしている子達が見える。
日菜子や蒼くんに要くんも見ていてくれるし、この騒ぎからか体育館の入口にはお化けのままの茜が見えた。
どんどん私も楽しくなってきてテンションが上がる。
サビで目線を合わせて更にギターの子も飛び出してきて、合わせて歌う。
あっという間に一曲が終わる。
こんな歌い方は初めてしたけど、なんだろう。
すっごい高揚感で気持ちよかった。
ニコッと笑って、一言。
「飛び入りだから、これでおしまい!」
一言言うと、近くまで来てくれてた要くんに向かってステージから飛び降りる。
上手くキャッチして下ろしてもらうと、そのまま通路になってる壁際を走り抜けて体育館を飛び出した。
体育館は、わーっと再び騒がしいほどの声が上がったけれどそれを背にして私と要くんは校舎へと戻って行った。