眩しさの中、最初で最後の恋をした。

「はい、気をつけて」

差し出された手を掴んで、ゆっくり降りる。
暗い中だと余計に見えないから、要くんの気遣いはとても助かった。
車の音を聞き付けたのか、お家の玄関が開いて要くんを渋い大人にした感じの男の人と優しそうな女の人が出てきた。

要くんのご両親だ。
要くんと玄関に向かい、そこで挨拶をする。

「初めまして。この時間の訪問を許して下さってありがとうございます。これ少しなんですが」

ご挨拶して、お母さんが用意してくれていたお菓子を渡す。

「初めまして。要の父です。こちらこそ、よく来たね。さぁ、まだ花火には早い。寒いから家に入りなさい」

そうして案内されたお家は木の温もりを感じる、温かく落ち着いた雰囲気のお家だ。

「初めまして、有紗ちゃん。要からチラホラ話は聞いていたのよ!会えて嬉しいわ」

ゆっくりとした話し声は、耳が聞こえないとは思えないほどハッキリと綺麗に話している。

「要から聞いてきた?」

驚いている私を見てお母さんはクスリと笑うと言った。

「聞くのは確かに難しいわ。でも元は聞こえていたから話すことは出来るのよ。それにゆっくり話してくれれば口を読めるから言ってることはわかるの」

その説明に、なるほどと思いながら要くんに引かれてリビングのソファーに腰を下ろした。





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