眩しさの中、最初で最後の恋をした。

要くんの家にお邪魔した時、一月に会った時より進んでしまった私の症状は会えば直ぐに分かったようだ。
視線を合わせて話せなくなってしまったから。

何となく声とぼやけた姿から人のいる場所は分かるけれど、しっかりと姿や顔を見て話すことは出来なくなってしまったから。

そんな私でも、要くんの御両親は温かく迎えてくれる。
寒い時期だけれど、火傷したりしないように少しぬるめに調節してくれたお茶や、お菓子は手に持たせてくれたり。
私はたくさんの優しさに触れながら、日々穏やかに過ごしている。

穏やかに迎えたバレンタイン当日は、日菜子と蒼くんの本命の受験当日でもあった。
私は最近はスマホで音声入力でメールやメッセージを送っている。
そのおかげか、とっても滑舌が良くなったと思う。

受験の当日は珍しく快晴で、日菜子と蒼くんはしっかりと受験会場に辿り着いたみたい。

グループメッセージで私もひとこと送った。

「日菜子、蒼くん!頑張ってね!次に会うの楽しみにしてるね」

次に会った時はきっと、ふたりを驚かせてしまうと思うけれど。
私は受験を終えて肩の力を抜けた、元気なふたりに会うのを本当に楽しみにしているのだ。

そして、午後お母さんと一緒に少し手伝ってもらいながら私は何度も練習したガトーショコラを何とか焼き上げた。




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