眩しさの中、最初で最後の恋をした。
ケーキに顔近づければ、とってもいい匂いがする。
どうやら上手くいったようでホッとした。
夜にお父さんお姉ちゃんや要くんが来た時に食べられるように、しっかり冷蔵庫で冷やすために綺麗にしまった。
それを終えると、ダイニングのテーブルまで家具を伝いながら歩いて椅子に座る。
私が椅子に座ると、お母さんが台所でカチャカチャと音を出している。
「お疲れ様。綺麗に焼けてよかったわね。おやつの時間だし頂き物だけれど、これ食べましょう」
お母さんが持ち出してきたのは、クレームブリュレバウムクーヘン。
有名なやつだ。
昔テレビで見て食べてみたいと思っていたもの。
「どこから頂いたの?これ有名なやつだよね?」
不思議に思って聞けば、なんとこれお姉ちゃんの頂き物らしい。
顧客のマダムから差し入れで頂いたんだと言う。
しかもこれの話をした時に私の事を話してたらしく、差し入れてもらった時に私にも食べさせてあげてと言われたのだという。
「ちなみに貰ってきたのは昨日よ。今日のお茶の時間に先に食べていいってお姉ちゃんから言われたから。食べましょ!」
お母さんの声が弾んでいる。
そう、うちのお母さんは我が家で誰よりも甘い物が大好物の甘党なのだ。
そんなお母さんが昨日これを見てから、かなり楽しみにしていたのが声からわかって、私は思わず笑ってしまうのだった。