眩しさの中、最初で最後の恋をした。

そこに久しぶり会う日菜子と蒼くんがやってきた。

「お、要!有紗ちゃん、おはよう」
「有紗、おはよう!」

ふたりの声は受験目前だった学年末の頃のピリピリした感じが抜けて、すっかり明るいふたりらしい声に戻っていた。
その事にホッとひと息つくと、私は返事をした。

「日菜子、蒼くん。おはよう」

すると私の様子がいつもとは違うことに、いち早く日菜子が気付く。

「有紗?なにがあったの?どうしたの?!」

そう問いかけて私の肩を掴む日菜子に、要くんが声を掛ける。

「ちゃんと話すから。有紗の話、聞いてやって。とりあえず教室に行こう」

そして要くんは私の手を取ると自分の肘をしっかり掴ませて歩き出す。
要くんが私を気遣い、歩幅と歩く速度を合わせてくれている。
家の中やたまにうちの近所を一緒に散歩することで、要くんは今日の登校までにしっかり歩行介助を出来るようになっていた。
歩行介助について、本やネットを調べたと言っていた。
まだあと少し学校に行かなきゃいけない事に気付いた要くんが、調べてから真っ先に私に提案してくれたのが歩行介助のことだった。

「普通に最後まで学校に行くにはどうしたらいいか考えたんだ。一緒に練習して残り何回かだけど、今まで通りの通学路で学校に行こう。一緒に行くから」

そこから今日まで何度も散歩をして、練習した成果が今日の疲労感少なく学校へとたどり着くという結果になった。
< 169 / 192 >

この作品をシェア

pagetop