眩しさの中、最初で最後の恋をした。
「有紗の、その病気は治らないの?」
静かな声音で、日菜子が問いかけてきた。
「うん。治療法の無い病気で、進行する病気だからね」
「そうなの……」
言葉が続かなくなった日菜子に、蒼くんが遠慮気味に声を掛けてきた。
「有紗ちゃん。もしかしてだけれど、去年から体育に出てなかったのって……」
「そう、病気で視力低下と物との距離感が危うくなってきてたから。病院からの診断書を出して体育に関しては免除を受けていたの」
そう答えると、はぁぁぁと息を吐き出した蒼くんは言った。
「それを俺達に気付かせないように、どれだけ気を使ってたの?水臭いじゃないか!」
「ごめんね。こんなに見えなくなったのも、ここひと月の事なんだよ。学年末テストまではテストが受けられるくらいには見えてたんだから」
私の答えに、蒼くんと日菜子は驚いた声をして言った。
「そんな急に見えなくなったの?!」
「急ではないよ。ずっとゆっくりと進行してたんだよ。十年前に病名がついてから、ゆっくりとね」
その私の言葉に、周囲のクラスメイトも驚いているのか少しザワザワと騒がしくなる。
「元から言われていたの。見えなくなるのは今頃だろうって。この春からいつ見えなくなるかとずっと気にしつつ過ごしていたけど。学年末テストまで済ませられたのは持った方だと思うんだ」
静かに微笑んで話す私に、周りはざわつきつつも何も言えないみたいだった。