眩しさの中、最初で最後の恋をした。
そう、私と日菜子は出席番号が隣同士。
卒業式は出席番号で並ぶから、隣は日菜子だ。
頼もしい日菜子の申し出に、私は笑ってうなずくと返事をした。
「そうだよね。日菜子よろしくね!」
「まっかせなさい!」
クスクス笑い合いながら、席に座った私を見届けて要くんと蒼くんも自身の席へと向かって行った。
高校の卒業式は、卒業証書はクラスの代表が取りに行くのでその場で立ったり座ったりする事はあるけれど、歩くのは入退場だけ。
体育館までは要くんが歩行介助で誘導してくれて、体育館前で並んでからは退場まで日菜子が誘導してくれることになった。
入場の練習の時、手を繋ぎながら進む私たちを見て何かを言う人はもう居なかった。
それまでの間に私達の様子や、やり取りを見て大体の人が私の状態を察したからだ。
日菜子に凄んだ笑顔で睨まれた子は、私の様子に気付くとバツの悪そうな顔をしていたみたい。
何も言いには来なかったけれど、きっと要くんが好きだったのだろう事は分かったので、私も特に気にしなかった。
「あーんな顔してるなら一言謝りに来ればいいのに」
隣でボソボソと小声でぶすっとした声で話す日菜子に、私は苦笑しつつ返事をした。
「もう突っかかってこなければそれでいいよ。謝られても、なんだかなぁってならない?」
私の言葉に、日菜子も考えた後に答えてくれた。
「それもそうね」
そうして、卒業式の予行演習は問題なく進んで終わった。
とりあえず、寒さの方がキツかったと言える。