眩しさの中、最初で最後の恋をした。
教室に戻るのは、また要くんが歩行介助をしてくれる。
階段は降りるより登る方がまだ楽で、行く時より戻る時の方が早く歩いて来れたと思う。
「やっぱり降りる方が大変だな」
要くんが私を介助しつつ呟く。
「そうだね。エレベーターがある所はありがたいね。エスカレーターも結局乗り降りが大変なんだもの。こうなってみないとわからないことって沢山あるね」
そんな会話をしつつ歩く私たちは、実にスムーズに教室にたどり着いてちょっとした疑問が湧き上がった。
「なんか、廊下静かだったし全然ぶつかったりズレたりしなかったね。あれ、周りが気を使ってくれてた?」
椅子に座ってから隣の席の要くんに聞けば、答えが返ってくる。
「なんか、俺と有紗が見えたら両脇にサッと避けてくれたんだよ。俺ちょっとモーセの十戒だっけ?海が割れる映画を思い出した」
そんな要くんの言葉に何だかその様子が浮かんできて、ちょっと笑ってしまった。