眩しさの中、最初で最後の恋をした。
そんな蒼くんの嘆く声に、日菜子はあっさりと返す。
「うむ、私は楽できて良かった!卒業式の日も頼むよ!」
日菜子ってば、彼氏に容赦ないね。
遠慮がなくて、仲が良いとも言えるけれど。
「だったら、着いた途端に俺を置いてかないでよ!」
声は本気ではなくちょっとからかいを含んでいる、そんな日菜子と蒼くんのやり取りに朝から笑顔が絶えなかった。
この間と同じように要くんの肘を掴んで教室までたどり着くと、この間とは違い明るい声で迎えてくれるクラスメイト達。
「お!汐月さん、松島。おはよう」
「汐月さん、おはよう!今日は体育館にひざ掛けもマフラーも持参で良いって!持ってきてる?」
「持ってきたよ!今日も寒いもん、絶対要るよね」
そんな声に答えながら席に向かう。
「あ、有紗。これ、あげる」
そんな声とともに手渡されたものは、温かい何か。
「あれ、これって?」
「ホッカイロ!今日ふたつ持ってきたから、ひとつは有紗にね!」
「わ!ありがとう。これで体育館耐えられる」
喜ぶ私をクスクス笑ってる要くんと蒼くん。
「ムッ!なんで笑うの!」
「いや、有紗って寒いのホント苦手だよね」
「だって、私は夏生まれだもの!寒いのは体に合わないのよ!」
そんな自己理論を言うと、周りがクスクス笑っていて私も自然と笑顔になっていた。