眩しさの中、最初で最後の恋をした。
夏休みに入って数日後、今日は日菜子の引退試合の日。

私は前に日菜子に差し入れて喜ばれたマフィンを作って、試合会場である学校のテニスコートに顔を出した。

『スパーン』

ボールが勢いよく飛んでいく音や、ラケットの音。
話す人の声。

運動部の風景は実に様々な音に溢れている。
動きも早くて、振り抜く音も、ボールの音も鋭い。

日菜子のサーブ姿勢はとっても綺麗。
一連の動きが流れるようにスムーズ。
それでも県大会ではベスト4止まりなのだ。
運動の世界はシビアで厳しい。

見ているだけしか出来ないけれど、日菜子の楽しそうにテニスをする姿を見るのは大好きだ。

日菜子は試合中どんなに押されても、押しててもどの状況でも楽しんでるのがよく分かる。
きっとテニスがすごく好きなんだと思う。

楽しげにアップをしていた日菜子は私が来たのに気づくと、バーっと駆け寄ってきた。

「有紗!見に来てくれたのね、ありがとう!」
「ふふ、そりゃ日菜子の勇姿は見に来るわよ。今後はなかなかそのテニス姿が見れないんだし」

ニッコリ伝えれば、日菜子も満面の笑みを浮かべて言う。

「それで、その手提げは?」
「もちろん、日菜子の大好きなチョコバナナマフィンだよ!頑張ってね、応援してるから」

私の言葉にやる気モチベーションが上がった日菜子は、その瞳をキラキラさせて答えた。

「絶対勝つ!!」

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