眩しさの中、最初で最後の恋をした。
教室について、ササッと制汗スプレーやシートで汗の処置をして机周りを整える頃には続々とクラスメイトが登校してくる。
「汐月さん、おはよう」
「おはよう」
そんな声をかけ合いつつ、私は持ってきた文庫本に目を落とす。
朝のチャイムまであと五分。
その位の時間に要くん、蒼くん、日菜子が登校してきた。
「有紗!おっはよー!」
飛び掛からん勢いで日菜子はこちらにやって来た。
それを、後ろから苦笑しつつ見守ってる蒼くんと要くん。
「おはよう、日菜子。今日も元気そうだね」
「もっちろん!今日から新学期だし、再来週は体育祭だもの」
さすが、体育会系。
運動会に燃えているね。
「おはよう、有紗ちゃん」
「おはよう、有紗」
ふたりも遅れつつ挨拶をしてくれて席に着く。
私達は教室の窓際後ろに席がかたまっているのだ。
一番後ろに日菜子と蒼くん。
蒼くんの前が要くん、日菜子の前が私だ。
正当なるくじ引きでこの席順だから、私たちのくじ運が強かったのだと思う。
「そうね、日菜子のお楽しみの体育祭は再来週だね! その前に模試だけどね」
この時期は夏休み明けに大体公立高校は全国模試をする。
うちは中間あたりの学校なので、そこまで難しくない。
かと言って簡単でもない。
うちの学校は六割が進学で四割は就職だ。
進学の子は大体塾で全国模試等を受けているので、学校は対策的に就職向きの全国模試だったりする。