雨夜の星に、願いひとつ
【賢二郎、ごめん、今日はバイト先の人たちと飲みに行くことになっちゃいました。夕食は外で食べてもらっていいですか? ごめんね…】
【OK。適当に食って帰るから大丈夫だよ。楽しんでおいで】
【ありがとう】
賢二郎とのメッセージのやり取りを手早く終えて、スマホをバッグに入れたとほぼ同時に、生ビールが運ばれてきた。
「では、相沢さんの歓迎会を兼ねて」
柴ちゃんの声を合図に、それぞれがジョッキを持ち上げる。
「かんぱーい!」
バイト終了後にわたしたちがやって来たのは、同じビルの8階にある居酒屋だった。
7人集まったメンバーは大学生から30代まで、性別も雰囲気もバラバラの人たち。だけど気さくそうな人ばかりで、わたしは内心ホッとした。
飲み会が始まり、和気あいあいと話すみんなを見ていてすぐに気づいたのは、柴ちゃんが上手に場の空気を作っている、ということだ。
特別口数が多いわけでも、テンションが高いわけでもないけれど、さらっとおもしろい話題を出して盛り上げる。
それでいて周囲への目配りも忘れず、全員が会話に参加できるよう、さりげなく気を使っている。
そんな彼のおかげだろうか、わたしの緊張はすっかり解けて、ふわふわと楽しい気分になっていた。