雨夜の星に、願いひとつ
『で、賢二郎くんとはうまくやってんの?』
「うまくって?」
『そりゃあ結婚の準備はちゃんと進んでんのか、ってことに決まってるでしょ』
はい、予想通りの質問。わたしは一気にうんざりしてしまう。
当初、娘の婚約を誰よりも喜んでいた母は、その後の進展がまったくないことを、やはり誰よりも嘆いているのだ。
「ちゃんと……は、進んでないかもしれないけど」
『まだそんなこと言ってんの? あんたたち、もう婚約して2年でしょ』
心配してくれる親の気持ちはわかるけど、そういう言い方をされると電話を切りたくなってしまう。
要するに母親的には、結婚準備が進んでいれば“ちゃんと”していて、進んでいなければ“ちゃんと”してないってことで。
つまりわたしは、2年も前から婚約していながら“ちゃんと”結婚できない女ってことで。
「仕方ないでしょ、賢二郎の仕事が忙しいんだから。バタバタした状態で入籍するよりも、落ち着いてからって決めてるんだよ」
『まあ、賢二郎くんも夢希のことを想って慎重になってるんだと思うんだけどね。でも一度きっちり話し合いしてみたら?』