雨夜の星に、願いひとつ
話し合いって……。そんなことをしたら、白か黒かハッキリさせなきゃいけなくなるじゃないか。
今の平和な関係は、グレーの境界線上でギリギリ成り立っているというのに。


「お母さんに心配してもらわなくても、わたしたちの問題だよ」

『でも、このままズルズルいっちゃうのも……』

「別にいいよ、それでも。結婚してもしなくても、今と生活がたいして変わるわけじゃないし」

『夢希、何バカなこと言って――』

「ていうか出先だから切るね」


わたしは一方的に話を終わらせて通話を切った。


「……はぁ」


自己嫌悪。脱力した体を支えるように、目の前の窓におでこをコツンとぶつける。ため息をはくと窓ガラスが白く曇った。

わかってるよ……お母さんの言っていることは正しい。
今のグレーな関係がどこにも向かっていないことを、わたしだって本当はわかってる。きっと賢二郎もわかってる。

だけど、話し合って答えを出すということは、前に進むか、ゼロになるか。

それがわからないから踏み込む勇気が出ないでいるんだ。
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