雨夜の星に、願いひとつ
“結婚は勢いが大事”と昔から言うけれど、本当にその通りだと思う。

時間だけが過ぎて勢いを失った愛情は、枝から落ちそうで落ちない、朽ちかけの果実みたい。

いっそのことゼロにしてしまえば、わたしは楽になれるんだろうか。

でも、もしそうなったとしたら、わたしの2年間は何だったんだろう?

自分なりにがんばってきたこと、ガマンしてきたこと、
すべてが無意味だったと突きつけられてしまうのは、存在意義を失うようで、とてつもなく怖い。


「――うわっ、ビックリした」


突然後ろで声がしたので窓からおでこを離すと、驚いた顔の柴ちゃんがガラスに映っていた。


「大丈夫ですか? 相沢さん」

「あ、うん。平気」


とっさに平静を繕ったわたしは、笑顔でふり返って返事した。それを見た柴ちゃんの顔も、スッとほころぶ。


「よかった。トイレ行って戻ろうとしたら、相沢さんが窓にくっついて固まってるからビビりました」

「あはは……いやあ、ガラスが冷たくて気持ちいいなーと思って」


冷や汗をかきながら、苦しい言い訳でごまかすわたし。

すると柴ちゃんは「マジっすか?」と言いながら隣に来たかと思うと、いきなりゴツン!と豪快な音をたてて窓におでこを押し当てた。

予想外の行動にこちらが面食らってもお構いなしだ。
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