雨夜の星に、願いひとつ
「あ、ホントだ。なかなか気持ちいいな、これ」
真顔でそうつぶやいてガラスに張りつくシュールな構図の柴ちゃん。
おまけに「窓がキンキンに冷えてやがる」と某モノマネ芸人みたいなことを言うもんだから、わたしは思わず吹き出してしまった。
「もー、何してんの」
あきれて笑うわたしに、柴ちゃんが満足そうな笑みを向ける。おぬし、まんまと笑ったな、と言いたげな表情で。
「相沢さんはホントに笑いのハードル低いっすね」
「あ、バカにしてるでしょ」
「してますん」
「どっち!」
柴ちゃんの背中をペシッと叩いて突っ込みながら、もしかして、とわたしは思った。
もしかして彼は、わたしが何か落ちこんでいると察してくれたのかもしれない。
それでわざと笑わせてくれたのかもしれない。
いや、たとえ偶然だったとしても、柴ちゃんがこのタイミングで笑わせてくれたことに感謝だ。
今のわたしには、こんな他愛ないやり取りが無性にありがたくて……
心をべったりと覆いつくしていたモヤが、彼のおかげでちょっと晴れた気がしたから。