雨夜の星に、願いひとつ
「そろそろ席に戻りましょうか」
「うん」
店内へとふたり並んで歩きながら、わたしはふと、前から少し気になっていたことを尋ねてみた。
「柴ちゃんって、大学生なんですよね?」
「はい」
「何歳?」
「21です」
4歳差かあ、と無意識に歳の差を計算する。そしてちょっとビックリした。
たしかに見た目だけなら、柴ちゃんは今時のおしゃれな大学生という感じだ。
でも、こうして話していると4つも年下とは思えないほど落ち着いてるし、楽しいし、安心して会話のペースを柴ちゃんにゆだねている自分がいる。
「……柴崎良太、おそるべし」
ぼそっとつぶやいたわたしに、柴ちゃんが小さく笑った。
「俺の下の名前、覚えてたんですね」
「へ? あ、うん」
ホントだ、わたし。なんで覚えてるんだろう。人の名前なんて普段はすぐ忘れちゃうくせに、我ながらめずらしいな。
頭の上に浮かぶクエスチョンマークを、「ま、いいか」と流そうとしたとき。
ふいに柴ちゃんが足を止めて言った。
「俺も、覚えてますよ」
「え?」
「夢と希望って書いて、夢希さん」
「………」