雨夜の星に、願いひとつ
6月中旬。日に日に夏本番が近づき、蒸し暑くなるのと比例するように、わたしの心には密かな変化が生まれていた。
だけどそれは、けっして認めてはいけない変化。
自覚したきっかけは、柴ちゃんが夢に出てきたことだった。
『夢希さん』
夢の中の柴ちゃんは、わたしを下の名前で呼んだ。
それから力強くわたしを抱き寄せて、何度もやさしく髪をなでる。
わたしは戸惑いながらも、心のどこかではそうなるのが当然だと思っていたかのように、彼のキスを受け入れて――
そこで目が覚めた。
「……嘘でしょ」
夜明け前の薄暗い寝室で、わたしは天井を見上げたまま声をもらした。
わけがわからない。いっそ嘘だと思いたかった。自分がこんな夢を見てしまったなんて。
となりから聞こえる賢二郎の寝息が、罪悪感をますます膨れさせる。
忘れよう、単なる夢だ、意味なんてない。自分にそう言い聞かせながら、布団を頭までかぶった。