雨夜の星に、願いひとつ

その日のバイトは、わたしが中番で柴ちゃんが遅番。顔を合わせる必要がないおかげで、バイトに没頭していると夢のことは頭から抜けていった。

――ところが、


「相沢さん、申し訳ないけど遅番も入ってもらえないかな。20時まででいいから、お願い!」


急に2人も欠勤になったらしく、必死にお願いしてくる店長に断ることもできなかったわたしは、結局遅番も入ることになってしまった。


「あれー? 相沢さん、今日は遅番だっけ?」


廊下で声をかけてきたのは、遅番で出勤したばかりのアルバイトの田中くん。
バイト初日の飲み会にも参加していた人で、柴ちゃんと同い年の大学生だ。


「うん。人が足りないらしくて店長から頼まれちゃって」

「そっかー大変だね。ほんとは早く帰ってビール飲みたいのにねぇ」


そう言って田中くんがニヤリと笑う。飲み会の日をきっかけに、なぜか彼はわたしを酒飲みキャラに認定してイジるのだ。
別にそんなに飲んだつもりはないんだけど、とどめの大吟醸がインパクト大だったらしい。


「だからー、わたしそんな酒飲みじゃないってば」

「わかってるよ。ただの酒飲みじゃなくて酒豪でしょ?」

「ひど!」


酒豪扱いは心外だけど、こうして遠慮なく接してくれるのは嬉しい。気楽で話しやすい弟みたいな感じだ。
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