雨夜の星に、願いひとつ
簡潔な自己紹介を終えたわたしたちの間に、店長が入ってきて言った。


「柴ちゃん、悪いわねー。今日は無理言って中番に入ってもらって」

「いえいえ。午前で授業終わってたから大丈夫ですよ」

「助かるわー。ほら、中番のバイトの人が一気に減っちゃったでしょ。相沢さんが新しく来てくれたけど、まずは仕事覚えてもらわなきゃだし」

「じゃあ俺、毎日は無理だけど、できるだけシフト入れるようにしますね」


ふたりの会話から察するに、おそらく彼は大学生か専門学生なんだろう。
今年25歳になるわたしにとって、学生という響きはほんの数年前のことなのに遠く感じる。


「柴ちゃん。これから相沢さんにいろいろ教えてあげてね」

店長にそう言われた彼は「はい」と返事して、小さくわたしに会釈した。


  * * *


「カラオケ屋でバイト?」

「うん。平日だけね」


夜、仕事から帰ってきた賢二郎(けんじろう)にビールを注ぎながら、昼間の面接のことを報告した。


「お昼の2時から6時まで、週4日くらい。さっそく明後日からシフト入れてくれるって」

「……そっか」
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