雨夜の星に、願いひとつ

【サッカー勝ちましたね!! 観てました?】


心臓の鼓動が跳ねあがる。その拍子にあやうくスマホを落としそうになり、とっさにテーブルの下でキャッチした。ほっと息を吐いて、改めて送り主を確認する。


……柴ちゃんだ。


瞬間、口元が無意識にほころんでしまった。
単なる短いメッセージなのに、それが自分の心の空いた部分にストンと降りてきた気がして。

わたしは耳をそばだてて、バスルームのシャワーの音が続いていることを確認してから返事を送った。


【勝ったね!もちろん見てましたよ~】

【よかった。俺テンションが上がって送ったけど、相沢さんがサッカー興味なかったらどうしようかと(笑)】

【普段はあんまり見ないんですけどね。典型的なニワカファンです】

【俺もですよ!】

【ニワカ仲間~】

【でもやっぱり日本が勝つと嬉しいですよね】

【うん、ハイタッチしたいね!】


……あ。これはまずかったか。送信した直後に軽く後悔した。

なんかテンションに任せて言っちゃったけど、よく考えたらスキンシップじゃん。

いや、でも、ハイタッチなんて普通にすることだし……渋谷の交差点とかで見知らぬサポーター同士がやってるし……。

少し不安になりつつ画面とにらめっこしていると、柴ちゃんから返事が届いた。


【じゃあ明日しましょう】

「………」


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