雨夜の星に、願いひとつ

これは、どういう意味だろう。
いや、そもそも意味はあるのか? ないのか?

ていうか、この人はわたしをどういう目で見てるんだろう。
ただのバイト仲間として? それとも、女として?


……我ながら不毛な疑問だ。そんなの知ったところでどうしようもないし、踏み込むべきじゃない。

そもそも、わたしはなぜこんなことを気にしているの? 賢二郎という婚約者がいるくせに、大バカだ。

期待しちゃいけない。近づいちゃいけない。ブレーキを踏まなくちゃいけない。

それは十分わかっているはずなのに――


【うん。明日こっそりハイタッチしようね】


わざと加速させるような言葉を選んでしまうのは、どうして。


【こっそりっていい響きですね。俺らだけの秘密っぽくて】

【秘密ですよ】


送り終えるのとほぼ同時に、バスルームの扉が開く音が聞こえた。

わたしはさっとスマホをテーブルに置くと、部屋に戻ってきた賢二郎をいつもと同じ笑顔で迎えた。


* * * * *
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