雨夜の星に、願いひとつ
「意外って何よ」
「ははっ」
そっぽを向いたわたしの目に、雨粒の流れる窓ガラスが映る。窓のむこうで赤から青に変わる信号機の光が、にじんだ絵具のようにボンヤリと見えた。
「……でも」
ふいに柴ちゃんが低い声でつぶやいた。
「雨で天の川が見えないなら、その方がいいんじゃないですか」
「え?」
「誰にも見つからないから、内緒で会える」
わたしは息をのみ、彼の方に視線を向けた。
橙色の暗めの照明が、柴ちゃんの顔に淡い影を作っている。いつもと違う大人びた表情に、自分の心臓がにわかに速くなるのがわかった。
「何それ。彦星と織姫の密会?」
緊張をごまかすように茶化した口調で返すわたし。柴ちゃんもおどけた表情でうなずく。