雨夜の星に、願いひとつ
大雨でずぶ濡れになりながら、息を切らし、マンションにたどり着いたときには20時を過ぎていた。
賢二郎はまだ帰っていなかった。スマホを確認すると一時間ほど前に【同僚と飲みに行く】というメッセージが届いていた。
わたしは一直線にバスルームに向かい、熱いシャワーを頭から浴びた。ついさっきの出来事を、そして彼の存在を、流してしまおうとするかのように。
シャワーを終えてバスルームを出たものの、濡れた髪を乾かす気力すらなく、リビングのソファにぼんやりと座っていた。
そのままかなり長い時間が経ち、いつのまにか雨が止んだころ、突然インターホンが鳴った。
……誰だろう。時計を見ると22時半。こんな時間に来客は不自然だし、賢二郎が帰宅したのなら普通に鍵を開けて入ってくるはずだけど。
不審に思いながらもモニターを確認すると、スーツ姿の見知らぬ若い男性と、その男性に体を支えられた賢二郎の姿が映っていた。
「……はい」
「あ、夜分すみません。賢二郎さんの会社の後輩の中島といいます。ちょっと、めずらしく賢二郎さんが酔いつぶれちゃって」
「えっ! ……すみませんっ、すぐに降ります!」
わたしはあわててオートロックを解除すると、部屋を出てエレベーターで一階に降りた。