雨夜の星に、願いひとつ
chapter.4 願いひとつ
以前、何かの本で読んだことがある。人間が抱くあらゆる願望は、突き詰めれば“もっと自分を好きになりたい”という願いから生まれていると。
美人になって、もっと自分を好きになりたい。
お金持ちになって、もっと自分を好きになりたい。
すてきな車に乗って、もっと自分を好きになりたい。
大好きなあの人に愛されて、もっと自分を好きになりたい――。
わたしは柴ちゃんに愛されることで自分を好きになりたかったんだろうか。ちっぽけで、無価値で、穴だらけの自分を。
けれど現実はますます自分を嫌いになっただけ。罪悪感と自己嫌悪に、わたしは今にもつぶされそうだった。
* * * *
横一列に並んだ階数のランプが、のろのろと動いては止まってを繰り返している。土曜日の病院はお見舞いで訪れる人が多く、エレベーターのボタンを押してもなかなか降りてこない。
「ねー、まだー? もう階段で行こうよー」
「もうちょっとだから待ちなさい」
ぐずる子どもをなだめる若いお父さんの声を聞きながら、わたしは時間つぶしにスマホを取り出した。
何度も何度も読み返し、だけど返事を送れないままでいるメッセージをもう一度読んで、重いため息をつく。