雨夜の星に、願いひとつ
「お母さん。調子はどう?」
病室の仕切りのカーテンをそっと開けて声をかけると、ベッドであおむけに寝ていた母がこちらに顔を向けた。
「だいぶ楽だよ。ありがとう」
「よかった」
着替えの入った鞄をベッドのそばに置き、その横の丸椅子に腰をおろす。
実家の母が倒れて入院した――と連絡が入ったのは、あの大雨の夜の翌朝だった。
幸い、夏風邪をこじらせた軽い肺炎だったけれど、母の看病と実家の家事のため、わたしはバイトを休んで一時的に帰省しているのだ。
「誰かとメールしてたの?」
母の手に携帯が握られているのに気づいて何気なくたずねると
「ううん。写真」
そう言って画面をわたしの方に向けた。
そこに映っているのはわたしたち親子と、賢二郎、そして賢二郎の両親で撮った記念写真。
婚約が決まった少し後に、両家で食事会を開いたときのものだ。