雨夜の星に、願いひとつ

『俺なら、天の川を泳いででも会いに行くけどな』


くだらない戯言。あんな言葉に揺さぶられるのはバカだ。愚の極みだ。

わかっているのに、記憶は甘く切ない疼きになってゾワゾワと背筋を這いあがってくる。


もう一度触れたい。
でも触れたらきっと戻れない。
もう会っちゃいけない。
だけど、会いたい。柴ちゃんに会いたい。


……ダメ。わたしは何を望んでいるの。賢二郎の本当の想いを知った今、何を他に求めることがあるの。

一時の気の迷いですべてを棒にふることはできないんだ。取り返しのつかないことになる前に、一刻も早く彼のことを忘れなくちゃ。

そう決心しようとした、そのときだった。


「うそ……」

思わず声がもれた。無意識に席を立ちあがった。


駅前の雑踏の中、柴ちゃんの姿を見つけたから。

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