雨夜の星に、願いひとつ
「……雨が」
「え?」
「雨が降っても……会えるんじゃないでしょうか」
唐突におかしなことを呟いたわたしに、先生がポカンとした表情で固まった。わたしはパッと笑顔をまとい、軽い口調になって言った。
「彦星さまが天の川を泳いで会いにいきますよ、きっと」
「え、あ~、あはは。そうですね」
つまらない冗談に付き合わされたとき、ほとんどの人がそうするように、先生は愛想笑いでやり取りを受け流す。
「それじゃあ、失礼します」
短冊をバッグにしまうと、会釈をして幼稚園をあとにした。